2人の左投手
我がチームには左ピッチャーが二人います。
一人は現在も大学野球バリバリで、スゴイ球を投げます。マジです。えげつないです。
もう一人は愛すべき我が息子で、大学4年まで投手として野球をまっとうし、ひいき目に見て、お父さんポイントを加算すると、いいピッチャーです。が、えげつない球は投げません。
前者のピッチャーは6月頃登板しており、12奪三振という試合で、自身もホームランを放つなど、派手な試合でした。彼は大学野球が忙しいため、その日以降試合には来ていませんでした。
それから3カ月ほどたったある試合で、メンバー表交換の際、相手チームの方が「今日は左投手ですか?」とおっしゃいました。うちの息子は社会人で、土日は仕事のため幽霊部員状態だったのですが、その試合では有休を取って先発で投げてくれるということになっており、(左?確かに今日投げるのは左である。質問への回答はYesである)となり、「はい左です」と答えました。
そして試合は始まり、息子は頑張って投げていました。娘もファーストを守っていたため、息子と娘が同じチームで試合する日が来るなんて、あ~なんてすて~きな~日だ♪って感じで試合を観ていたのですが、ふと、先程の質問が頭をよぎりました。相手チームの方はもしかして、えげつない左が投げるかどうかの確認をしたのでは?と思いました。おそらくそうでしょう。えげつない左を攻略して勝ってやるぜ!なのか、うわさの左投手を見てみたい!なのか分かりませんが、何らかのお考えがあったと思います。そこへ我が息子がマウンドに登場、投球を始めた瞬間、(ん?左だな、確かに左だ。しかし、えげつなくはないな、でも「うわさの左投手が先発ですか?」と聞いたら、背番号だけ30の小太りの監督っぽい男が「そうですよ」と言っていたが、、、)と思われたに違いありません。
ちなみにその試合は、息子、娘と投手リレーし、息子は勝利投手になりました。
伝説誕生の方程式
ここからはいつものイマジネーションの世界ですが、6月に対戦したチームや観戦していたチームから「すごい左投手がいるらしいぞ」「めちゃめちゃ速いらしいぞ」「三振の山だったらしいぞ」といううわさ話が生まれたとします。
一方、9月の試合で対戦した人は、「そんなにえげつなくはないけど」「話と違うな」「調子が悪かったのかな?」となります。
そこに、「いや球威が凄すぎてキャッチャーミットが飛んだらしいぞ」などとお調子者が冗談を言ったとします。さらに「審判がよろめいたとも聞いたぞ」と調子を合わせる人がいたり、それを鵜呑みにする人がいたり。果ては「そんなに大したことない」が誇張され、「ホームまで届かなかったと聞いた」などと人の話はどんどん変化をしていきます。現在のように文明の利器が発達していなければ、どっちが本当なんだ?となり、「どうやら普段は温厚でゆったりした投球だが、怒ると関西弁になり、キャッチャーごと審判を吹き飛ばしたらしい」という都市伝説などが完成します。
こうやって神話、伝承は生まれてくるのだと思います。
~東の果てには建物が全て金でできている黄金の国ジパングがあるらしい~
~聖徳太子は同時に10人の言うことを聞き分けたらしい~
~弁慶は立ちながら死んだらしい~ など
所属チームが同じ、投手の特徴(左投げ)が同じ、実際に見た人が別人、などの要素が年月を経て、新しい証言を生み、それが伝わっていく。そこには人間の主観や、こうであって欲しいという希望や恨みなどが加わっていくのである。
自分でも、どうでもいい事ばかり考えているという自覚はあります。